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神奈川県の「がけ条例」が2026年4月に改正|高低差2m超の土地を買う前・売る前に確認すること(海老名・座間・綾瀬)

海老名市、座間市、綾瀬市で土地や中古戸建てを探していると、道路や隣地より一段高い土地、ひな壇状に造成された住宅地をよく見かけます。こうした高低差のある土地に関わる神奈川県のルールが、2026年4月1日に変わりました。

いわゆる「がけ条例」と呼ばれる、神奈川県建築基準条例第3条です。この記事では、県が公開している条例の新旧対照表と解説をもとに、何が変わったのか、土地を買う人・売る人が何を確認しておけばよいかを整理します。

1. 何が変わったのか(結論)

  • 条例の対象となる「崖」が、高さ3m超から高さ2m超になりました(勾配30度超は従来どおり)。
  • 崖の上の盛土で擁壁を設けなくてよい条件が、高さ2.5m以下・勾配45度以下から、高さ1m以下・勾配30度以下に厳しくなりました。
  • 崖の上の敷地に求められる排水の措置が、高さに関係なく必要になりました。

つまり、これまで「3mはないから条例の対象外」と扱われていた高さ2m〜3m程度の高低差が、建築や造成のときに検討の対象に入ってきた、ということです。改正条例は令和7年12月23日に公布され、第3条は令和8年(2026年)4月1日から施行されています。

出典:神奈川県「神奈川県建築基準条例の一部改正について」、新旧対照表(PDF)、神奈川県公報 抜粋(PDF)

2. 改正前と改正後の比較

項目 改正前 改正後(2026年4月1日〜)
対象となる崖 高さ3mを超えるがけ 勾配30度超・高さ2mを超える傾斜地
擁壁が必要な範囲 がけの下端(建物ががけの下にある場合は上端)から、高さの2倍以内 崖の下端から、高さの2倍以内
擁壁不要となる崖上の盛土 高さ2.5m以下・勾配45度以下・芝等で覆う 高さ1m以下・勾配30度以下・芝等で覆う
崖上の敷地の排水措置 高さ3mを超えるがけの上の敷地 崖の上の敷地(高さの限定なし)

出典:新旧対照表(PDF)

3. 海老名市・座間市・綾瀬市、厚木市での扱い

海老名市・座間市・綾瀬市は、神奈川県が建築行政を担う「県所管区域」です。建築の実務は県の土木事務所が担当しており、今回の県条例の改正がそのまま関係します。

一方、厚木市は市が特定行政庁で、市独自の建築基準条例があります。厚木市内の土地は、市の条例で確認が必要です。

参考:神奈川県「県所管区域における建築基準法の取扱いについて」、厚木市建築基準条例 新旧対照表(PDF)

4. 「崖の高さ2m」はどこからどこまでか

「2m」と聞くと、擁壁の見えている部分の高さだけを想像しがちです。しかし条例の「崖の高さ」は、それとは一致しないことがあります。

県の解説では、次のように整理されています。

  • 崖の下端:傾斜が30度を超え始める点
  • 崖の上端:下端から30度の線を引き、その線が地表と交わる点
  • 崖の高さ:崖の下端と崖の部分の最高点との高低差。自然の崖かどうかは問わない
  • ひな壇状の崖:下段の崖の下端から引いた30度の線より下にある上段の崖は、一体の崖としては扱わない(裏を返すと、30度の線より上にかかる上段の崖は、下段と一体で扱われ得る)

たとえば、高さ1.5mの擁壁の上に、さらに法面(斜面)やブロックの積み増しがある土地では、「擁壁は1.5mだから関係ない」とは言い切れません。斜面の角度と位置によっては、上の部分まで含めて「崖」の高さになるためです。高低差が2m前後ある土地では、目分量ではなく測量図や現況測量で確かめるのが確実です。

出典:神奈川県建築基準条例 第2条の2〜第3条 解説(令和8年3月31日改訂版・PDF)

5. 擁壁が必要になる範囲と、擁壁がなくてもよい場合

崖の下端からの水平距離が、崖の高さの2倍以内の位置で建物を建てる、または敷地を造成する場合には、崖の形状や土質、建物の位置・規模・構造に応じて、安全な擁壁を設ける必要があります。

計算の例です。高さ2.4mの崖なら、下端から水平距離4.8m以内が対象です。崖の上に建てる場合も、崖の下に建てる場合も、この範囲にかかるかどうかで判断します。幅の狭い宅地では、4.8mという距離が建物の配置を大きく左右します。

ただし、次のような場合は擁壁を設けなくてもよいとされています。

  • 崖の形状や土質から見て、安全上支障がない部分
  • 崖の上部の盛土で、高さ1m以下・斜面の勾配30度以下・芝などで覆った部分
  • 崖の上に建てる建物で、基礎が崖に影響を与えない場合(深基礎や杭など)
  • 崖の下に建てる建物で、主要構造部を鉄筋コンクリート造にする、または崖と建物の間に流土止めを設ける場合

ここで大事なのは、「擁壁を作る」以外にも選択肢があることです。ただし、どの方法も費用や建物のプランに影響します。土地の価格だけでなく、「この土地に建てるなら、どの方法で条例を満たすか」まで含めて考える必要があります。個別の敷地でどれが認められるかは、設計者や県の判断になります。

6. いま建っている家はどうなるのか

第3条は「建築物を建築し、又は敷地を造成する場合」の規定です。そのため、改正されたからといって、いま建っている家に擁壁工事をすぐ求めるものではありません。

ただし、将来建て替えるときや、敷地を造成するときは、その時点の条例で判断されます。高さ2m〜3mの崖に接する家は、以前なら第3条の対象外だった可能性がありますが、次の建替えでは擁壁や基礎の検討が必要になることがあります。第3条の改正に関する経過措置は、公報の附則には定められていません。

「家は今のまま住める」ことと、「土地としての使いやすさ」は分けて考える必要があります。買う側は将来の建替え費用を、売る側は買う人がそこを気にすることを、それぞれ頭に入れておくと判断しやすくなります。

7. 盛土規制法:土地を持っている人の責務

がけ条例とは別に、「宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)」による規制もあります。神奈川県は2025年4月1日から、県所管の全域(横浜市・川崎市・相模原市・横須賀市を除く29市町村)を規制区域に指定しています。海老名市・座間市・綾瀬市・厚木市もこの中に入ります。

土地を持っている人にとって重要なのは次の点です。

  • 過去に行われた盛土も含め、土地の所有者・管理者・占有者は、その土地を安全な状態に維持するよう努めることとされています。
  • 災害防止のため必要な場合には、工事をした事業者だけでなく、土地所有者等も勧告を経て改善命令を受けることがあります。
  • 土地が譲渡された場合、その責務はその時点の所有者に移ります。

買った後に「前の持ち主が作った擁壁だから」とは言えない、ということです。県は既存盛土等の位置図も公開しています。

出典:神奈川県「盛土規制法の神奈川県での運用」、市町村ごとの規制区域の概要、既存盛土等位置図、国土交通省「盛土規制法の体系」(PDF)、宅地造成及び特定盛土等規制法(e-Gov法令検索)

8. 買う前に確認したいこと

高低差のある土地や中古戸建てを検討するとき、現地と資料で確認しておきたい点です。

資料で確認すること

  • 擁壁の確認済証・検査済証:高さが2mを超える擁壁は、建築基準法上の「工作物」として確認申請の対象です(建築基準法施行令第138条)。開発許可や宅地造成の許可を受けて造られた擁壁なら、その記録があるか。資料がある擁壁とない擁壁では、建替えのときの話の進み方が変わります。
  • 擁壁が誰のものか:境界線が擁壁の上端にあるか下端にあるかで、擁壁が自分の土地か隣の土地かが変わります。測量図と境界標で確認します。
  • 崖の高さと位置:現況測量図で、崖の下端から建物までの距離が「高さの2倍」にかかるか。
  • 規制区域:土砂災害警戒区域・特別警戒区域や、既存盛土等の位置図に該当しないか。

現地で見ること

  • 擁壁の種類:鉄筋コンクリート造か、間知石・間知ブロック積みか、大谷石や石を積んだだけのものか。古い擁壁の上にブロックを積み足した「増し積み」や、擁壁の上にさらに擁壁がある「二段擁壁」は、建替えのときに安全性の説明がつきにくく、作り直しを含めた検討になりやすい形です。
  • 水抜き穴:擁壁の面に水抜き穴があるか、詰まっていないか。雨の後に水が出ているかどうかも手がかりになります。
  • ひび・ふくらみ・傾き:擁壁の面が前にせり出していないか、目地がずれていないか、上の地面に沈みや割れがないか。
  • 崖の上の排水:雨水が崖面や擁壁の裏に流れ込むつくりになっていないか。改正後の条例では、崖の上の敷地には高さに関係なく排水の措置が求められています。

土地の価格が周辺より安いとき、その理由が高低差と擁壁にあることは珍しくありません。安いかどうかは、土地代に擁壁や基礎にかかる費用を足した総額で判断する必要があります。

9. 売る前に用意しておきたいもの

高低差のある土地を売るとき、買う人や買う人の設計者から聞かれやすいのは擁壁のことです。次のようなものが手元にあれば、売却の前に探しておくと話が進めやすくなります。

  • 購入時の重要事項説明書・売買契約書
  • 建物と擁壁の確認済証・検査済証、開発許可などの資料
  • 測量図(境界確定の資料があればそれも)
  • 擁壁の補修や工事をしたことがあれば、その内容が分かるもの

資料が見つからないこと自体は珍しくありません。その場合も、何があって何がないのかを先に整理しておくことで、買う人への説明や価格の考え方を落ち着いて決められます。

個別の敷地での判断については、県所管区域の担当は神奈川県の土木事務所です(県の案内ページ)。

10. お問い合わせ

高低差や擁壁のある土地は、図面だけでは判断しきれないことが多い土地です。

「気になっている土地に擁壁があるので、建てる前提で一緒に見てほしい」「自宅の裏が崖になっていて、売るときにどう評価されるか知りたい」といったご相談をお受けしています。当社は建築・造成・外構まで含めてご相談いただけますので、海老名市・座間市・綾瀬市の土地や中古戸建てで気になるものがあれば、お気軽にお問い合わせください。

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著者紹介

白石 進(株式会社スマートフルホーム 代表)。海老名市生まれ・海老名市育ち。建築・土木の仕事を約10年経験したのち、不動産業界で約10年。センチュリー21スマートフルホーム(相鉄線さがみ野駅徒歩4分)で、海老名・座間・綾瀬を中心に売買のご相談をお受けしています。

仕事の中で考えていることは、noteに書いています。

※本記事は2026年10月時点の公開資料をもとにしています。個別の敷地での擁壁の要否は、崖の形状・土質・建物の計画によって変わります。

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