親が施設に入った、入院が長引いている。そんなとき、実家を「とりあえずそのまま」にしているご家族は少なくないと思います。
先に結論を書きます。実家が空き家になる前に、家族で次の3つを確認しておいてください。
- 実家を管理する人は誰か
- 建物と、門・塀の状態はどうか
- 家族の間で、どんな情報を共有しているか
この3つが決まっていないと、誰も見ていない時間が長くなります。きっかけになったニュースから説明します。
岡山県の町で、空き家の門が公費で解体された
2026年10月、岡山県里庄町が、倒壊のおそれがある空き家の門を「略式代執行」で解体したと報じられました(KSBニュース)。
報道によると、門は築60年以上の木造瓦葺きで、高さ約3m・幅約3.5m。3年前に近所の方から「危険な門がある」と町に相談があったそうです。所有者はすでに亡くなっていて、町が法定相続人に連絡したところ、全員が相続を放棄していました。
町は今年7月にこの門を「特定空家」に認定し、町として初めての略式代執行に踏み切りました。工事費は約60万円で、請求する先がないため町が負担する見込みと報じられています。
略式代執行とは、危険な空き家について、対応を求める相手(所有者など)が見つからないときに、市町村が代わりに解体などを行う手続きです(空家等対策の推進に関する特別措置法 第22条第10項)。
これは岡山県の事例です。ただ、空き家に関する法律は全国共通なので、海老名・綾瀬・座間の実家でも同じ仕組みが当てはまります。
相続放棄をすると、実家の管理はどうなるのか
相続放棄とは、亡くなった方の財産を、預貯金などのプラスも借金などのマイナスも含めて一切引き継がない手続きです。家庭裁判所に申し立てます。期限は原則として、自分のために相続が始まったことを知ったときから3か月以内です(民法915条)。
相続放棄をしたあとの管理については、2023年4月に施行された改正民法でルールがはっきりしました。放棄した時点でその財産を「現に占有」している人は、次の相続人や相続財産清算人に引き渡すまで、自分の財産と同じ程度の注意で保存しなければならない、という内容です(民法940条)。
では、どんな人が「現に占有」に当たるのか。国土交通省と総務省は自治体向けの通知で、個別の事案ごとに判断が必要としたうえで、例として次のような場合を挙げています(国交省・総務省 事務連絡)。
- 実家に自分の家財や荷物を置いている
- 実家の鍵を持っている
こうした場合は、占有者に当たる可能性があるとされています。
つまり、「相続放棄をすれば実家とは無関係になる」とは言い切れません。逆に、実家と関わりのない人がいつまでも責任を負い続けるわけでもありません。どちらに当たるかは状況によって変わるため、相続放棄を考えている方は、手続きの前に弁護士か司法書士に確認してください。
空き家を放っておくと、何が起きるのか
空き家のまま手入れがされないと、市から指導を受けることがあります。2023年12月に施行された改正空家特措法では、放置すれば特定空家になるおそれがある「管理不全空家」も、市が指導・勧告できるようになりました。勧告を受けると、土地の固定資産税を軽くしている「住宅用地の特例」が外れます(犬山市資料による改正の概要)。
もう一つ、門や塀、建物が倒れて人やものに被害を出した場合の責任です。民法717条では、こうした「土地の工作物」に欠陥があって他人に損害が出たとき、まず占有者が、占有者が必要な注意をしていた場合は所有者が賠償する、と定めています。
古くなった門や塀は、空き家かどうかに関係なく、道路を歩く人に影響します。誰かが気づいたときに対応できる状態にしておくことが大切です。
家族で確認したいこと(1)実家を管理する人は誰か
「誰かが見ているだろう」が一番危ないと思っています。次の点を、家族の間ではっきりさせておいてください。
- 鍵を持っているのは誰か
- 誰が、どのくらいの間隔で見に行くか
- 草木の手入れや修理の費用を、誰がどう負担するか
- 近所の方から連絡が来たとき、誰が受けるか
先ほど書いたとおり、鍵を持っていることや荷物を置いていることは、相続放棄をしたときの扱いにも関わる可能性があります。誰が何を持っているかを、家族で把握しておきましょう。
家族で確認したいこと(2)建物と、門・塀の状態
実家を見に行くと、家の中や屋根には目が向きます。一方で、門や塀、ブロック塀は「昔からあるもの」として見過ごされやすいのではないかと感じています。
私は不動産の仕事をする前に、建築・土木の仕事を約10年していました。門や塀を見るとき、私が見ているのは次の3点です。
- 傾き:道路側や隣地側に傾いていないか。少し離れて、正面と横から見ると分かりやすいです。
- ひび割れ:塀や門柱、基礎の部分にひびが入っていないか。
- 控え壁があるか:ブロック塀を裏側から支える短い壁のことです。高さ1.2mを超えるブロック塀には、建築基準法施行令で原則として控え壁を設けることが求められています。
どれか一つでも気になったら、専門家に見てもらうことをおすすめします。海老名市には、道路に面したブロック塀などの撤去費用を補助する制度もあります(海老名市 ブロック塀等撤去費補助事業)。工事を始める前の申請が必要で、対象や条件は年度ごとに変わることがあるので、市のページで確認してください。
家族で確認したいこと(3)家族で共有している情報
管理の話と同じくらい大事なのが、情報です。親が元気なうちに、次のことを家族で共有しておくと、いざというときに慌てずにすみます。
- 土地と建物の名義は誰か(登記の内容)
- 権利証(登記識別情報)や固定資産税の通知書がどこにあるか
- 住宅ローンなどの借り入れが残っていないか
- 相続人になるのは誰か
- 親自身が、実家を今後どうしたいと考えているか
なお、2024年4月1日から、不動産を相続したときの相続登記の申請が義務になっています(川崎市の案内)。名義が亡くなった祖父母のままになっていないかも、あわせて確認しておくとよいと思います。
相続が始まる前に、家族で話し合っておく
ここまで3つの確認事項を書きましたが、私が一番伝えたいのは、相続が始まる前に、相続人になる家族で実家をどうするか話し合っておくことです。
相続が始まってからだと、手続きの期限があり、気持ちの整理もつかないなかで決めることになります。住むのか、貸すのか、売るのか、まだ決めないのか。結論が出なくても、話し合ったという事実と、誰が何を考えているかを知っておくだけで、その後の動き方が変わります。
市の空き家相談窓口も使えます
海老名市・綾瀬市・座間市には、それぞれ市の空き家相談窓口があります(海老名市・綾瀬市・座間市)。海老名市では、空き家になる前の住まいについての無料相談会も行っています。
市の窓口では、制度や手続きについて相談できます。実家を売るか残すか、家族で話し合う材料がほしい方や、どこに相談すればいいか分からない方は、私たちにご相談ください。
スマートフルホームにご相談いただけること
実家をどうするか、まだ何も決まっていない段階でもかまいません。私たちは不動産の売買を中心にしている会社ですが、ご相談の内容に応じて、司法書士・弁護士・解体業者などの専門家をご紹介することもできます。
- 実家の名義や状態を整理したい
- 売るか、残すか、家族で話し合う材料がほしい
- 門や塀が気になっているが、どこに相談すればいいか分からない
ご相談は無料です。下のお問い合わせフォームからご連絡ください。
売却を考えている方は、不動産売却・査定のページもご覧ください。
Noteでは、なぜ相続が始まる前に家族で話し合ってほしいのか、私の考えをもう少し詳しく書いています。(Noteを読む)
※この記事は一般的な情報をまとめたものです。相続放棄や管理責任の判断は個別の事情によって変わります。具体的なご判断は、弁護士・司法書士などの専門家にご確認ください。


